はじめて食べた「すりながし」は、アスパラガスよりアスパラガスの味がした

2018年10月10日

はじめて「すりながし」を食べたのは、2014年8月、『飲食店経営』の取材で、羽田空港の「ひとしなや」のすりながし専門店でアスパラガスのすりながしを試食したときでした。

お茶代わりに出されただしを飲んだ後、すりながしをひと口食べると、アスパラガスそのものよりアスパラガスの味がしました。ひと口、ふた口、と食べるほどに体の中がきれいになっていくような、澄んだおいしさに感激しました。

今なら素材そのもの以上に素材のうまみを感じたのは、だしに含まれるイノシン酸と、アスパラガスに含まれるグルタミン酸などの“うま味の相乗効果”によるものだと説明できますが、そのときは、ただ驚き、感動しました。この感動を伝えたい!と、すりながしの本の企画を出版社に持ち込み、約3年後にようやく企画が通り、2018年10月に『すりながしのレシピ』が刊行されました。

「ひとしなや」は、当初は「すりながし」「あさごはん」「どんぶり」の3つの専門店が軒を連ねていましたが、数年後に業態が変わり、本の企画が通ったときにはすでにすりながし専門店はなくなっていました。(現在は「華ちらし」「あさごはん」「十割そば」の3店となっています。)
もし、あのすりながし専門店が、羽田空港でなく女性が多く働くオフィス街にあったら、健康や美容に関心のある女子の間で話題となり、すりながしは人気となっていただろうに……と残念でした。

でも、情報が氾濫する今、まだ広く知られていない、大きな可能性のあるもの=「すりながし」と出会ったのは大きな幸運かも――『すりながしのレシピ』を作る中で、すりながしを広める活動をライフワークにしようという思いはふくらんでいき、共感してくれる仲間も現れ、すりながし協会を立ち上げたのでした。