すりながしを3カ月毎日作ってみた

2022年5月20日

2月4日の立春から5月5日の立夏までの3カ月間、毎日すりながしを作ってtwitterに投稿しました。

当初は七十二侯ごと、約5日ごとにアップするつもりでしたが、twitterを始めたばかりで、毎日更新しなくてはとの思いから毎日作り、そのうち毎日違う食材を使るという意地が湧いてきました。

食材を毎日変えるとなると、今まで決まった食材しか見ていなかったスーパーの野菜売り場を、すみずみまでチェックするようになります。

春先という時節がら目に留まったのが山菜。今までは外出先でたまに食べる程度で、自宅で調理したことはほとんどありませんでした。実際に使ってみると、あく抜きなどの手間はかかるものの、土の香りがして、しみじみとおいしい。

春になると登場する「新」のつく野菜。表示を見ると、その多くが九州産でした。それが次第に北上して関東のものも出てきます。毎日すりながしを作ることで、以前よりも産地に気を留め、とれた土地の気候や流通経路を想像をめぐらせるようになりました。

日本列島は縦に長く、九州と北海道とでは大きく気候が異なります。ですから、一時期にさまざまな野菜が楽しめ、また、それぞれの旬を、わりあい長い期間味わうことができます。私たちは恵まれているなあ。日本の風土に感謝したい気持ちになりました。

素材の良さを生かし、素材にあまり手を加えることなくいただくのが日本料理の基本的な姿勢です。すりながしの「すりつぶす」手法は、ときに食材の持つ独特の食感を殺してしまうようで、しのびない気持ちになることもありました。けれど、すりつぶしても、食材が持つもともとの食感は、意外に残るんですね。それも発見のひとつでした。

それぞれの食材に合った調理法をあれこれ工夫して作るのが、料理の醍醐味です。でも、どんな食材も迷うことなく毎回同じ”すりながし”の調理法を施すことで、定点観測のように旬の味を確かめることが3カ月でした。